Output Module の製作

概要

モジュラーシンセを扱っているサイトやブログを見て回ったが、スピーカーへの出力を説明しているところがない。興味本位にDIYでモジュラーシンセを始めたので、アンプやスピーカーとモジュラーシンセの関係がわかっていない。

しかたなく、ネットでみつけた断片的な情報を整理していくと、つぎのことが見えてきた。


  • Eurorackモジュラーシンセが扱う信号レベルは他の音響機器よりも大きく、たとえば、VCO出力は -5V から 5V (10V peak to peak、以下10Vpp)である。

  • 一方、出力先の音響機器の信号ラインレベルはこれらと異なっている。

  • 音響機器のラインレベルには、プロフェッショナルと民生用(コンシューマー)の 2種類がある。

    • プロ用ラインレベル (+4dBu):約 1.75Vpp、アウトボード ミキサー、シンセサイザー、ドラム マシンおよびその他の電子楽器
    • 民生用ラインレベル (-10dBV) :0.5Vpp ~ 1Vpp:ホームステレオやエンターテイメント機器および一部の楽器

この海外サイトに次の表が出ていた。今後のためになるのでコピペで貼り付けておく。スピーカーやヘッドフォンなどの民生用オーディオ機器の扱う電圧がよくわかる。

レベルdBuRMSピーク出力入力
マイク-60dBu ~ -38dBu775μV~10mV±2.2mV~±28mV~150Ω1kΩ~2kΩ
楽器-20dBu ~ -14dBu80mV~160mV±225mV~±450mV10kΩ(エフェクト)~50kΩ(ギター)1MΩ
民生用ライン-7.8dBu (-10dBV)316mV±885mV<100 td="">≧10kΩ
プロ用ライン+4dBu1.228V±3.44V<100 600="" td="">≥10kΩ または 600Ω (旧)
ユーロラック(プログラム)+7.2dBu2.30V±5V0または1kΩ~100kΩ
ユーロラック(ノコギリ歯)+11.4dBu2.89V±5V0または1kΩ~100kΩ
ユーロラック (正弦波)+13.2dBu3.34V±5V0または1kΩ~100kΩ
スピーカー+11dBu以上2.83V以上±7.92V以上8Ω(または2Ω、4Ω、16Ω)8Ω(または2Ω、4Ω、16Ω)


この表を見ると、接続する外部ミキサーやオーディオ インターフェイスに合わせて、モジュラーシンセの出力を低く調整しなければならない事がわかる。 このために、各社からアウトプットモジュールとかミキサーと一緒になったインターフェイスモジュールが多数発売されている。

  1. Make Noise のXOH
  2. Intellijel のOuts
  3. Noise Engineering のSono Abitus
  4. Joranalogue のTransmit 2
次の写真のように多機能なものもある。 Intellijel のOuts

これらを参考にしながら、DIYモジュラーシンセの第一作目はOutput Module を自作することにした。とは言ったものの、具体的に何dB下げれば良いのか、皆目、見当が付かないのでオープンソースの回路図をコピーすることにした。

出力はダイソー300円スピーカー(多分、ステレオ出力)とヘッドフォンを想定している。

本文

参考/引用元サイト

次に挙げたサイトのドキュメントや回路図を何度も読み込むとともに、回路図をLTspiceで再現して理解を深めた。この回路のを自作の元回路にする。

FEATURES

  • 6.5mm TRS Balanced Outputs
  • 6.5mm TRS Headphone Output
  • LED signal monitoring for each Input.
  • Selectable signal monitoring at Headphone Output
  • Current needs: +12V: 24mA, -12V: 26mA

動画を見ていると、作り方がなんとなく呑み込めてくる。このモデルからIndicator(LEDのレベルメータ)のアイデアと回路を拝借することにする。

Inputs

  • Left channel (MONO)
  • Right channel

Outputs

  • Balanced Left (6.3mm TRS Jack)
  • Balanced Right (6.3mm TRS Jack)
  • Headphones Stereo (3.5mm Jack)

Controls

  • Headphones Volume
  • Gain trimmer

Indicator

  • VU meter, 4 LEDs per channel
  • (0 dB = 0 dBu)

Supply (55 ohm Headphones @ Max volume)

  • +12 VDC @ 85 mA

  • -12 VDC @ 85 mA

tkilla64


仕様と回路図

仕様

  • 2ch inputs
    • Left channel (MONO)
    • Right channel
  • Stereo (2ch) Outputs :出力レベルコントロール付き (3.5mm Jack)
    • 出力レベルコントロールの回路はBefaco OUT V3 を利用する。(LTspiceで確認すると、10Vpp入力に対して 数10mVppから最大 4Vpp のゲイン調整が可能)
    • Cue 入力とHeadphone Monitor は省く。
    • Befaco OUT V3 は Balanced Outputs であるが、受け側のダイソーアンプが対応していないので Unbalanced Outputs(GND common)に変更する。
  • Headphones Stereo (3.5mm Jack)
  • 出力レベルメータを設ける。(tkilla64/eurorack の回路を利用する。表示は0~3Vに変更する。)
  • 電源 ±12V

回路図

参考にしたBefaco VOT V3 を元に作った回路図を示す。

レベルコントロールは2chとも同じ回路構成であるが、Lch入力だけでRchの入力がないときにはMONOになる。TL074とコンデンサ、抵抗などで比較的簡素に構成できる。

sch1

レベルメータは半波整流を行う理想ダイオード回路とローパスフィルタでDCへ変換した電圧をLM339コンパレータで比較して、LEDを順次点灯させる。2つのチャンネルそれぞれにLM339が必要で、さらに、2つの整流回路用にTL072が1個必要である。どちらかといえば、主機能のレベルコントロールよりもレベルメータ回路の方が構成部品が多くなった。

sch2

シミュレーションと予備実験

出力レベルコントロール

調整用のポテンシオと出力電圧の関係を右下グラフに示す。

黄色のV(OUT) が出力電圧、水色のV(TPm) が出力レベルメータ用にローパスフィルタを通した電圧である。 抵抗比率(ノブの回転量)0.8 のときに民生用ラインレベル電圧の出力 0.8V であり、それ以降はプロ用ラインレベルの4V程度に急増する特性であることがわかる。

simulation 1


回路図の定数どおりにブレッドボード上で試験回路を組み、測定すると下図青色線のようになった。±10V、10kHzの入力信号をポテンシオでレベル調整した結果である。

測定値は”真のRMS”なので、ピーク値に換算すると、ポテンシオが100kΩのとき、
$$ 入力:7034 \times \sqrt2= 9950 [mV] \\ 出力:2766 \times \sqrt2= 3910 [mV] $$ と設計通りであった。

ゲイン特性

出力レベルメータ

右側のトランジスタ周りが定電流を作る回路である。

$$ \begin{aligned}LEDを流れる電流 &= \frac{2個直列Diodeの電圧降下\ 約1.1V - EB間電圧\ 0.6V }{ 抵抗R6\ 100 ohm} \\ &= \frac{ 1.1 - 0.6 }{100} \\ &=\ 2.7 mA \end{aligned} $$

Tp2の電圧が高まるにつれて、4つのコンパレータ出力が順次遮断されることで、その下流のLEDが点灯する。


上記でいう水色のV(TP2)に相当する入力電圧に対して、各LEDを流れる電流とコンパレータLM339の出力を見ると下図になる。

0V, 0.5V, 1.5V, 3V で段階的にLEDが点灯する。2段階目のLEDが点灯し3段階目のLEDが点灯しなければ、おおよそ民生ラインレベルの電圧に調整できたことになる。

simulation 2


ブレッドボードの試験回路で特性を確認した。

始めに、DC変換を行わずレベル相当の電圧をコンパレータに直接入れた場合の特性(仮称、静特性)を下図に示す。

sim 3


さらに、±6V, オフセット1V, 1Hzのサイン波を基準信号にして、この振幅を周期0.01Hzで電圧制御した場合の特性(仮称、動特性)を次図に示す。信号は回路図の入力(TP2)の位置に入れている。

sim 4

静特性、動特性とも設計した0V, 0.5V, 1.5V, 3V で段階的にLEDが点灯することが確認できた。

LED点灯をグラフで表現するため、コンパレータ出力端の電圧(LTspiceの回路図で言えばR8出口の電圧)を測定している。


動特性をオシロで見ると下図になる。
黄色の1Hz基準電圧を青色の周期0.01Hz三角波で電圧制御したとき、ピンク色のDC変換された電圧に対してLEDが順次点灯している様子が確認できる。このときのコンパレータ出力端の電圧が水色である。4段階の電圧が発生している。

DSO_dyn


基準電圧をLEDの点灯が目視で確認できる1Hzにしたときのオシロ波形が下図になる。同様にLEDの順次点灯の様子がわかる。

DSO_1Hz


HeadPhone アンプ

元は、12Vから18Vの単電源を抵抗で分圧して、仮想GNDを基準とした正負電圧で動く回路だが、±12VのEurorack電源を使えるように改造して搭載する。

headhone amp

完成

オリジナルは2連タイプのポテンシオを使うが、それがなかったので1連のポテンシオを並列に並べている。

finished 1

finished 2



関連リンク

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